筒井康隆/『農協月へ行く』

筒井康隆 『農協月へ行く』 「そうです。月面には何にもありません。砂以外、何もありません。空気さえありません。何があると思っていたのです(…)」 農協月へ行く (角川文庫 緑 305-14) 作者: 筒井康隆 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 1979/05 メディ…

梨木香歩『海うそ』

梨木香歩『海うそ』 まるで、この山野に、そんなものが存在していたことなど、一度もなかったかのように。夢だったのだろうか。浜の方から吹き上がる風が、外側から自分の内側へ、通り抜けていく。 海うそ (岩波現代文庫) 作者: 梨木香歩 出版社/メーカー: …

アンナ・カヴァン『氷』

Anna Kavan "ice" / 『氷』 氷 (ちくま文庫) 作者: アンナカヴァン,Anna Kavan,山田和子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2015/03/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (19件) を見る 氷 (1985年) (サンリオSF文庫) 作者: アンナ・カヴァン,山田和子 …

ヘルマン・ヘッセ『メルヒェン』

Hermann Hesse MÄRCHEN / 『メルヒェン』 埋もれていた無数の記憶が揺すぶられ、流れ、ころがりはじめた。暗い目をした人間の顔が見えた。その目が強いるように山に尋ねた。 「願いごとをしたくはないかい?」と。 メルヒェン (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋…

稲垣足穂『天体嗜好症』

稲垣足穂 『天体嗜好症』 ……それはどう云いましょうか?その性質として伝統を持っていないもの。たとい伝統はあっても、それがしきたりの附随感を与えないような類を指しているのでした。だから一面に、それらは虚無的であり、機械的だとも云えます。 天体嗜…

アントニオ・タブッキ『夢の中の夢』

Antonio Tabucchi Sogni di sogni/『夢の中の夢』 ひと言で現代芸術の主要な特徴を要約しようと思えば、それは<夢>という言葉のなかに完璧に発見できるだろう。現代芸術とは夢の芸術なのだ。(一七〇) ––– 不穏の書、断章 フェルナンド・ペソア 夢のなかの…

多和田葉子『かかとを失くして』

多和田葉子『かかとを失くして』 鞄の中の帳面は角ばって、いやに大きく感じられた。むかし子供っぽい空想に駆られて、これとそっくりの帳面に私は、世界旅行の物語を書いたことがあったが、今は帳面は白紙で私自身が遠い国に来てしまったのだから、自分の小…

アンドレ・ジッド『田園交響曲』

André Gide La Symphonie pastorale/『田園交響楽』 あなたのおかげで視力が与えられたとき、目のまえに開けた世界は、あたしが想像していたより、ずっと美しいものでした。ほんとに、日の光がこうも明るく、風がこうもきららかで、空がこうもひろびろしてい…

はじめまして

大学4年の夏も終わる。気が付けば実家でひきこもりまがいの生活を送っている自分。どうしたものか… と言ってはみたものの、実はそんなに悲観的ではない。いろいろあったが、夢がはっきりしたのでブログを始めることにした。今の自分に欠けているものは、アウ…